「教えずに気付かせる」ということ その1

日本サッカー協会のコーチライセンス取得のための養成スクールで何度も言われるのが、この「教えずに気付かせよう」ということです。

わたしも一時期、これを忠実に守っていました。

とは言っても、小学生のサッカー選手はそう簡単に気付いてはくれません(苦笑)。何とか気付かせるために、あの手この手、様々なトレーニングメニューを組み、チャレンジしました。

ですが、どうしても教えなければならない場面は出てきます。

例えば、ディフェンスをするときの基本位置は、ボールを持っている相手に対して、ボールとゴールの間。

なぜかといえば、ディフェンスでなによりも相手にされたくないことは『点を取られる』こと。

相手が点を取るためには、シュートを打つ必要があります。

つまり、相手に点を取らせないためには『シュートを打たせない』ようにしなければならないわけです。

これだけは、最後の一線としてどうしてもしっかりと行いたい。

そしてそのためのディフェンスの位置が、ボールを持っている相手に対して、ボールとゴールの間で、この位置にきちんと入って相手の邪魔をしなければならないのです。

攻撃で言えば、シュートが打てる場面なのにパスを選択してしまう。

結局、原理原則に則ったプレーをするように導くことが大事で、コーチはそのことを、繰り返し言い続けなければならないと私は思います。

常に私が選手に問いかける言葉があります。

それは「みんな、試合は勝ちたいの? 負けたいの?」と。

選手はもれなくその問いかけには「勝ちたい」と言います。

さらに私は尋ねます。「勝つと言うことはどういうこと?」

ちょっと言葉に詰まる選手がいます。

私の答えは「相手より多く点を取るということ」です。

そのためにはできるだけ相手に点を取らせないようにしなければならない。

点を取らせないようにするには、シュートを打たせないようにしなけばならない。

だから、守備でいちばん相手選手にさせてはならないことが、シュートを打たせる、ということなのです。

対して自分たちが攻撃側であれば、同様の質問「みんな、試合は勝ちたいの? 負けたいの?」で、勝つためにはどうすればいいのか? と尋ねます。

当然、たくさんシュートを打つ必要がある。

だから、限られた試合時間という中でたくさんシュートを打つためには、まずゴールが見えたらシュートを打つべきだし、シュートが打てる相手ゴールの近くまで『確実に何度も』ボールを運ばなければならない。

そのためにはどうしたらいいのですか? という話になるわけです。

サッカーの原理原則に常に立ち返り、そこからコーチングすれば、気付きは早くなります。

そしてまた、コーチングも迷い道にさ迷いにくい。

ポゼッションのためのポゼッション。

これは、ポゼッション、ポゼッションとそればかり言っていると実に陥りやすい罠です。

サッカーは点を取り合うスポーツなのだから、点を取らせない、点を取るということにフォーカスする。

以前もここで書いていて、実に当たり前のことなのですが、意外と忘れがちです。