ポゼッション重視のサッカー。
具体的にはしっかりとパスでつなぎ、攻撃を組み立てていくサッカーを指します。
これをチームとして行うには、よく行われる練習に3対1、いわゆる鳥かごなどがあります。
もちろんそれはそれで効果的な練習ではありますが、実際にゲームの中でどう使うかというと、チーム全体としてのプレーにはつながりにくいのではないでしょうか。
私がその最大の理由として挙げたいのは、本能によるポジショニングを修正しない点です。
自分たちがボールを持ち、攻撃に入ると10人中10人が前に走ります。
もちろんそのこと自体は悪くないのですが、ここで大切なのは前に『どのように』走るか、という点です。
この点を修正せずにゲームをさせると、パスコースがなく、またボールを受ける方は相手選手の陰に隠れてしまうのでパスはつながりません。
結局、お互いに『ボールを奪っては急いで前に進めようとするからパスをカットされる』という連続になり、きちんとパスで攻撃を組み立てる、というところまでなかなか辿り着きません。
ではどうしたらいいか?
私はこういうチームを指導する場合にまず、次のような練習を行います。
ピッチサイズはレベルに応じて変えればいいですが、小学生高学年であれば横30歩×縦40歩くらいを目安にオーガナイズしてください。
基本位置は図1のようになります。
図1
ゴールキーパーが入り、フィールドプレーヤーは4人で、5対5を行います。
人数が多くてボールにうまく絡めないようであれば、フィールドプレーヤーを3人に減らしても構いません。
ルールは、縦パスは禁止。パスは横パスかバックパスのみ。
ですが、さすがにゴールキックなどは前に蹴るのを禁止しては厳しいですから、最初のファーストプレイは前へのパスをOKにします。
得点は、相手チームのエンドラインをドリブル通過で獲得となります。
いわゆるラインゴールです。
何もコーチングせずに攻撃にはいると、図の赤チームの選手は矢印の方向に走り出すのではないでしょうか。
仲間がボールを持つと「それ攻撃だ!」とばかりに、何も考えない選手は前に走り出します。
これを図にしたのが図2です。
図2
ですがたいていはパスがもらえず、こうして交互にボールを持っては攻め手にかける蹴り合いになってしまいます。
ですが今回の練習では、前にパスが出せません。
ですからボールよりも前に走り出しても、パスは出てこないのですから意味のないランニングになります。
この部分をまず、コーチングで修正してあげて下さい。
ではボールを自分たちがもったらどうすればいいか。
それを考えたのが図3です。
図3
まずボールを持っている選手が自分の前にドリブルで進めるスペースがあれば、ドリブルしてボールを進めます。
なにしろパスは横か後ろだけなのですから、
相手が近付いてきたら、ボールを持っている選手に対して必ずサポートが必要となります。
そしてこのサポートの選手と平行して他の選手はラインを作ります。
この,ボールを持った選手に対してサポートする選手の距離を『深さ』と言い、ラインを作った横を『幅』と言います。
よい攻撃の基本は『幅』と『深さ(厚み)』といわれますが、つまりはこういうことです。
ボールを持ったら闇雲に前に走り出すのではなく、サポートの選手が必ず入り、さらにその選手がボールを後ろに引き出したら、横に広がってボールを受ける。
そうしてボールを受け、自分の前にスペースが空いていればドリブルしてボールを前に進める。
この練習を繰り返せば、深さと幅は作れるようになります。
ですがドリブル以外の選択肢がバックパスか横パスというのも厳しい。
もちろん、それも正論です。
ですから、深さと幅が作れるようになってきたら、常に最優先しておくべき縦への意識を高めるため、図4のように今度はゴールスペースを作り、ここでパスを受けたら得点という形にして、仲間がパスを受けて得点になる縦パスならOK、というルールに変えます。
図4
こうすることで、縦への意識、さらには動きながらボールを受ける、という意識付けができるようになります。
また、サポートするにもボールを持っている選手に対してのポジショニング、距離が大切になります。
これに関しての練習は、次に紹介したいと思います。
2012.9.27補記
追加します。小学生の場合、レベルによってはいきなり足でこの練習を行うのは難しい場合があるかと思います。
サポートのイメージを作るためにも、まずは手でボールをパスして行うと、次の足で行う練習へと移行しやすいと思います。私も選手のレベルによって、初めてこの練習を行う場合にハンドパスで練習させる場合があります。
川上滋人