ミゲルさんの指導を受けて その1

ミゲルさんの指導を一週間受け、私自身の指導はずいぶん変わりました。

大きく挙げると二つあり、その二つとは
1)練習中、選手を褒める
2)足裏を使ったプレーを積極的にトレーニングさせる
というものです。

今回はまず、1)について書きたいと思います。

ここでも書いているように、私はチームの規律がとても大切だと考えています。規律は英語で言うと「discipline」。規律、訓練といった意味も持ち、「military discipline 軍事訓練」と使われるように、軍隊で求められるような厳しい規律という意味合いになります。

それを徹底するためには、ある程度の厳しさが必要だと私は考え、何も考えずにプレーを続ける選手には厳しく問いかけることがありました。

ですがミゲルさんの指導は、まず選手に対して叱りません。常に笑顔で、萎縮させるようなことは絶対にせず、選手に接し続けます。

そもそも、なぜうちのチームがミゲルさんの指導を受ける番組で選ばれたのかというと、昨年から今年にかけて日本サッカー協会が行ったサッカーコーチのリフレッシュ講習会にあります。ミゲルさんが講師として行った講習会が、私の記憶では合計5回あり、私は仕事の都合で2回は参加できなかったのですが、残りの3回に出席しました。その講習会終了後、日本サッカー協会の方が参加者に感想を書く紙を配ったのですが、私はそれに記入。それが、ここで紹介されました。

TV製作会社の方が、私のこのコメントを見て、チームの候補として挙がり、何回かの打ち合わせ、チーム練習などを視察され、選ばれたのです。

ですから私自身、ミゲルさんの考え、指導方法というものに関してはそれなりに理解しているつもりでした。

特にこの本を読み、ミゲルさんの「選手を信じる」というその姿勢に関しては、深く感銘しました。

ですがトレーニングに関しては別で、やはりそれなりの厳しさを持って接するのだろうと考えていたのですが、まったく違っていました。このあたりは実際にTVでご覧になられた方も多いと思いますので、詳細は避けますが、上手にできてもできなくても、選手をけなすようなそぶりはまったく見せません。

どうしてなのだろう? 私はミゲルさんの1週間の指導をサポートしながら、ずっと考えていました。

一つ、すぐに思い浮かびました。それは、どういうとトレーニングを積んでいけば、成長したときに理想的と考えられるサッカー選手に育つことができるか、明確な道筋がミゲルさんの頭の中にしっかりと存在する、ということです。

ミゲルさんのレベルには及ばないながら、私もこのトレーニングの積み上げと選手の成長する先の姿に関しておぼろげにですが道筋が見えてきているので、理解できます。私の場合、この道筋を自分なりに確認するために小学生の指導だけでなく、中学生、高校生レベルの指導も始めたわけで、そのコーチ活動の中で、自分なりのイメージを作ることが徐々にできるようになっていると、選手の成長を確認する中で感じています。

そしてもう一つが、選手の幅広い可能性を強く信じている、ということです。冷静に考えてみれば納得できると思いますが、誰もがサッカーのプロ選手になれるわけではなく、ある選手は草サッカーを楽しむレベルで終わるでしょうし、中学から高校、大学とサッカーを続け、社会人リーグで戦うようになるかもしれない。それぞれのレベルに応じたサッカーとの付き合い方があるわけで、そして一人一人、サッカーと接する中で、その人なりに成長していくことができれば、スポーツとの関わり方としては良いはずです。

つまり、その人なりの成長をしてくれるベースを小学校世代のサッカーで作ることができれば十分、という信念を持つことができているのだと思います。だから、多少うまくいかなくても、自分の指導を続けていればしっかりと成長してくれるし、焦る必要はない。

目の前の事象に振り回されることなく、冷静に明るく楽しい雰囲気で、コーチングしていけるのだという結論に達しました。

もちろん、ステレオタイプに「ただ褒めればいい」という話ではありません。そこには、「しっかりとした指導理念に基づいて」という言葉が付きます。

このあたりに関しても、私なりに考えたことを今後、書いていきたいと思います。