ドリブル練習に対する指導者の意識の持ち方

先日ここで、ドリブル練習に関して私なりの意見を書きました。またそのことに関する話題が先日見たサッカークリニック5月号(ベースボールマガジン社)に、興味深い記事が掲載されていたので、紹介したいと思います。

記事は15ページから17ページまでの3ページ企画で、企画の狙いが導入部分に掲載されているのでまずはそれを紹介します。

「ヨーロッパの名門クラブのディレクターや育成部門で監督を務めたことのある指導者が結集し、スペインのバルセロナで設立したのが『サッカーサービス社』だ。現在、スペインをはじめ、各国リーグで活躍する選手の能力向上を手助けしている。日本での指導経験も豊富な同社の指導者に日本にカスタマイズした指導方針を聞いていく」。

この中でサッカーサービス社の指導者は「日本ではドリブルで相手をかわす、スペースへ進んでいくという練習が多く行われている」という指摘をされています。

そして「このような練習はウイングやサイドバックを育てる目的に適したもの。その結果、質の高いサイドバックやウイングが育っていると言えるが、フィールドの中央でプレーする選手でもウイングやサイドバックのようなぷれーをする、という現象も生み出している」と指摘されています。

ジュニア期のトレーニングにおいて、ドリブル中心、それも相手をかわす、スペースへ運ぶ練習を中心にしていると、中央でプレーする選手が育ちにくいという弊害を指摘しているわけです。

サッカーにおいて、常に大きな柱となるべきものは『良い判断』であると私は考えます。

プレーするエリア毎に、選択するプレーは変わってきます。
そして選択する基本としてまず、あらゆる選択肢を撰べる場所にボールを置く技術は身に着けさせるべきであり、その意識付けをすべきではないでしょうか。

その基本技術が身に着けば、自ずと顔は上がりますし、相手選手はうかつに懐へ飛び込めませんから、ボールホルダーは自分の間合いでプレーすることができます。

この風間八宏さんのDVDの最後の方で、自分の間合いが持てる場所へボールをキープする練習のまとめとして、3対2のボールポゼッション練習をしています。ぜひご覧になっていただきたいのですが、ディフェンス二人は飛び込めず、オフェンス側の三人はしっかりとボールポゼッションを行うことができています。

大げさなフェイト動作や難しいボールの動かし方をすることなく、相手の重心を左右どちらかに動かし、その逆を取るという練習(これも風間さんのDVD Vol.2で紹介されています)を繰り返し行い、その技術を身に付けられれば相手を交わすことはできます。

そして10人のサッカー選手がいたら10通りのサッカーの美学をそれぞれが持っているように、ドリブルというプレーに対しても一人一人、適正が異なり、さらに美学を持っているものです。その美学に対して指導者が敬意を持ち、修正するような押し付けはすべきではないと私は考えます。

ということは、フェイントは放っておいても選手が勝手にやり出します。学校の休み時間に友だちとサッカーをするときなどでは盛んに、やりたいフェント技を出すでしょう。そしてそうした機会で、こうした技術は磨かれるのです。

チーム練習の中でそうしたフェイントを見せ、修正した方が良い点があるようであれば、それは指導者が指摘してあげれば良いと思います。またアイデアを持っていないような選手ならば、いくつかのパターンを指導者が見せてあげるのも良いと思います。ですが基本的にフェイント技術に関しての練習はこの程度のもので十分なのではないか、というのが私の考えです。

フェイント技術に多くの時間を割くならば、正確なトラップやパス、そしてそれをベースにしたピンポイントの自分の間合いが持てる場所へ正確にトラップしてボールを置く、という技術を磨くべきではないでしょうか。

では中央(ボランチやアンカーなどセンターハーフ、センターフォワード)でプレーする選手には、どのような練習をさせれば良いのでしょうか。
それについては次の記事で紹介したいと思います。