ジュニア期の練習でいちばんの練習がドリブルでいいのか?

ゴールデンエイジ期(おおよそ12歳前後まで)に身に着けたいいちばんのテーマが多くのチームではドリブルと考えていませんでしょうか。

幼稚園、小学生、さらに中学生のチームでも、コーチがボールの上で足を回し、これがステップオーバーで、これがシザースで、とやっている姿は実によく見かけます。

先日参加したリーグ戦では小学1年生の選手がフェイントをしようと、相手選手を目の前に一生懸命足を振り回していました。シザースで交わしたかったのだと思います。

それを見たコーチが「ナイスフェイント!」と褒め、当の本人も満足げでしたが、現実はその子が足をボールの上で回している間に相手選手にボールを奪われてしまいました。

基本形を習得させるのには形から。たしかにそれも一つの考え方ではあると思いますが、目的と手段がここでも混乱しているような気がします。

ボール保持者が基本中の基本として考えなければならないことは、簡単に相手選手にボールを奪われないよう工夫すること。それをした上で、ドリブルすべきかパスすべきか判断しなければなりません。

状況によってはダイレクトでパスを回した方が良いのかもしれませんし、スペースがあるのならそこへドリブルで入っていってもいいと思います。もちろん、ゴールに近くて目の前に相手選手が一人。スペースもあるというのなら、ドリブルで勝負を仕掛けてもいいと思います。

それらはすべて、どうしたらシュートにたどり着けるかという考えに基づくもので、目の前に相手選手がいるからとボールの上で足を回すことではないはずです。

実に日本的な指導方法だと感じました(似たような話はここでも書きました)。

もちろんドリブルは重要な基本技術です。いわゆる止める・蹴る・運ぶ。この三つが等しく、サッカーの基本技術として重要になりますから、そのベースを作るジュニア期にはこれらの要素を繰り返し練習し、たしかな技術として身に着ける必要があることにはだれも異論ないはずです。

ただし、ここで重要視すべきことがあります。

それは「精度」です。

トラップならどこにどのように止めるのか。

キックならどこへ、どのくらいのボールを蹴って到達させるのか。

ドリブルならどのようなスピードで、ボールのどこをどのようにタッチして運んでいくのか。

そうした細かいことをしっかりと認識し、選手の中に理想形を持たせ、いかにそこに近付いたプレーができるのか、それを意識させるのと漠然と練習させるのでは、プレーの精度に大きな違いが出ます。

もちろん、サッカーを始めたばかりの子に足下にぴたりと止めるようなトラップを要求してもそれは無理です。

ですが指導者が始めたばかりの時期から、何が理想的なトラップで、その考え方はどういうものなのかというのをそれぞれのレベルに応じた問いかけをし続けていれば、選手は自ずと理想を求めるようになります。

そうした視点で止める・蹴る・運ぶというサッカーの基本的な三つのプレーを見ていくと、本当に運ぶということにいちばん時間をかけて練習して良いのだろうか、という疑問が沸いてきます。

では何をいちばん重要視すべきなのか。

私は『止める』ではないかと考えています。

一言で『止める』と言っても、この技術は実に奥が深いものがあります。

風間八宏さんのDVDの第1巻のテーマが『止める』です。ですが、このDVDを購入した当初はどうして風間さんがDVDのテーマの最初に『止める』というテーマを選んだのか理解できませんでした。

ですが、このDVDで紹介されている、高い精度を目指した『止める』練習を繰り返し行っていく中で痛感しました。

『止める』技術こそが、すべてのサッカーのプレーの基本になるのです。

このDVDの中で風間さんは
・ボールを止める位置を見付ける
・方向を変えてボールを止める
・的のプレッシャーを感じずにボールを止める
・前から来るボールを止める/離れながらボールを止める
といった練習を行っています。

この中でまず最初に重要なことは『ボールを止める位置を見付ける』ということです。

詳しくはぜひDVDで見ていただきたいのですが、風間さんはボールを止める位置を「すぐにドリブルでもキックでもできる場所」と指摘しています。

そしてこの場所にボールを止めることができれば、相手ディフェンダーは飛び込めず、フリーズします。

このことは、実際に選手のトレーニングでこの練習を指導し、私自身が実感しています。的確な場所にボールを止めることができれば、思い通りのプレーがしやすくなるのです。

この基本位置にボールを止める意識を持って練習に取り組んでいけば、高い技術を持った選手に間違いなくなれます。

ボールを置く位置が適当であれば、近くに相手選手がいれば間違いなく寄せられ、プレッシャーをかけられて自分の思い通りのプレーはしにくくなります。

ですから、ドリブルよりもなによりもまず、この『止める』技術に注目し、しっかりとした止める技術を身に付けることが重要だと私は思うのです。