風間八宏氏が提唱する「受ける技術」「外す技術」

風間八宏さんは近著「風間塾」(朝日新聞出版)で、こう語っています。

「1990年代あたりからしばらくの間、サッカー界ではその「受ける技術」が欠如している、もしくは重要視していなかったために、「スペースを消しあう」という形でしかサッカーが進んでいませんでした。守備、つまりボールを持っていない選手たちが相手を包囲したり、ボールを持っていない選手たちの意志でサッカーが展開されていることが非常に多かったのです。

しかしここ数年で、世界のトップ選手たちは変わってきています。それは、「受ける」という技術を身につけたからではないでしょうか。

例えばメッシ、チャビ、イニエスタらは言うまでもありません。ウェイン・ルーニー、クリスティアーノ・ロナウドといった選手たちも、最も効果的に、自分の特徴を出せる場所、あるいは相手の嫌な場所でボールを受けることができてしまうので、「守備で相手を包囲する」、あるいは」「守備で自分たちの意志をピッチに持ち込む」という、90年代を席巻したトレンドが非常に困難になってきました。

要するに、「本来のサッカー」=「球技」に戻ってきたということです。」(P23~24)

(中略)

「今までは「二人で囲みなさい」、「三人で取りにいきなさい」という指示や、「スペースを消して、相手の受ける場所をなくしましょう」という対策を考えたかもしれません。しかし、現在世界のトップで「受けられる選手」というのは、そんなことは関係ありません。

彼らにとって、「グランドの中では必ずフリーな場所ができる」のです。それは何かと言えば、相手の力の逆を取るということです。

前に出てきた選手の後ろでボールを受ければいい、あるいは二人、三人いるところの死角でボールを受ければいい、ありはその選手の一歩を利用してそれ以上動けない(身体が伸びない)場所で受ければいい。つまり、相手が抵抗できないスペースで「受ける」ということです。

このタイミングを見極める眼と、相手の動きを視野に入れる眼。パスを受ける、相手を外すという動きにおいて、これらの感覚はとても重要になります。人間は360度同じように動けるわけではありません。そういった身体の仕組みを利用して、スペースを作り出すというわけです。

これが、我々の考える「受ける」という技術です。そして、これが我々の考える「スペース」なのです。」(P24~25)

風間さんのDVDを見て学び、さらに川崎フロンターレで実践しているサッカーを見ると、その難しさ、そして面白さがよく分かってきます。

面白さはもちろん、見ている者にとって狭く感じる場所を綺麗にパスでつないで崩すそのダイナミズムです。

そして難しさは、この「受ける」「外す」技術は狭いスペースでボールを止め、相手の動きの逆を取る動きをするために、高い精度が要求されるのです。つまり、相手に対して少しでもひるむとその精神面でのぶれがボールコントロールに誤差を生み、相手に簡単にボールを奪われてしまうのです。

高い技術と、それを支える勇気、メンタルタフネスが高いレベルで要求されるのです。

ですが、受ける、外すプレーができ、さらに真の意味での数的優位を造る積極的な連動した動きが出ると、その攻撃は実に魅力的なものになります。

オープンスペースを使えとよく言いますが、突き詰めていくと空いたスペースは、見かけ上は選手がたくさんいるエリアにもあるのです。あえていうならば、ボールをオープンスペースに展開しなくても、高い技術を持つ選手にはどこでもスペースが存在するのです。

フロンターレの試合をTV解説者が「狭い場所で足下にばかりボールを回してリズムがよくない」と言うことがありますが、昔の常識に囚われてしまっているのかもしれません。

ここでも紹介しましたが、それを現在、積極的に行っているチームが風間監督率いる川崎フロンターレであり、クロップ監督率いるドルトムントなのだと思います。

その一つに練習方法に関してはここでも紹介しましたし、ぜひ風間さんのDVDで学んでほしいですが、私も積極的に練習に取り入れていますので、そのパターンを、今後は紹介していきたいと考えています。

また本に関しては、ここでも内容が紹介されていますのでご覧になってみてください。

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川上滋人