名古屋グランパス・風間八宏監督が常々口にする言葉、『スペース』について

レベルが上がるとスペースは作れば良いので、最初からスペースがある必要はない。風間八宏監督が常々口にする言葉だ。要するに、パサーからボールを受ける瞬間、極論を言えばボール分のスペースだけがあれば良いわけで、常にスペースが存在しなくても良いというわけだ。そんな目で、4月3日早朝に行われたリーガ・エスパニョーラ第29節バルセロナ対グラナダの試合を見ていたのだが、スペースを活かす高度な技術に思わず私が唸ってしまったシーンがあったので、今回はそのことについて書こうと思う。

 

ボールを出すパサーと、それを受けるレシーバーの意思さえ合えば、スペースが存在しなくても、瞬間的に受けられる場所を作れば問題ない。風間監督がよく言う、攻撃側が守備者を自由に動かせば、ディフェンダーは無力になるというプレーだ。

 

大事なのはパサーからボールが出るタイミング。これもよく言われるように、顔を上げ、周りを見て受け手を見付けたら、顔を下げ、次に瞬間にボールを蹴るのでここの瞬間。このタイミングで、パサーからレシーバーにボールが出てくる。

 

『相手を外す』という練習はよく行われるが、だいたいが受け手の都合でディフェンダーを動かし、そのタイミングにボールを持っている選手がパスを出すという形だ。しかし実際には、レシーバーだけでなくボールホルダーもディフェンダーのプレスを受けるわけで、ボールが出るタイミングでレシーバーはマーカーを外さなければ、せっかくフリーになってもボールは出てこない。

 

マーカーを『外し』、ボールを受ける瞬間にフリーになるためには、ボールが出てくるタイミングを理解しつつ、マーカーから逃げなければならないのだ。

 

この練習については、風間監督が出しているトレーニングDVDで紹介されているので、興味がある方はぜひご覧になってみてほしい。

 

そのDVDの中でも説明されているが、マーカーがレシーバーに付いてきた場合と、少し離れている状態では、外し方が異なる。

 

注目したいのが、バルサ対グラナダの試合でのグラナダの得点の部分だ。

 

ちょうどyoutubeにその試合のハイライトがアップされていたので、それもここで紹介したい。

 

 

この試合の7分30秒あたりから始まるグラナダの得点シーンを見てほしい。

 

背番号8のムバラクがターンしてブスケツのマークから逃げながら前を向き、プレッシャーを受けながらドリブルして前に進む。この瞬間、背番号10のボガがマテューと併走しながらパスを受けるため前に走り出す。

 

画面では分かりにくいが、最初のところでボガはマテュー側に一度寄り、そこから離れる動きをしてパスを受けられるスペースを自分の左側に作っている。これは推測だが、おそらくマテューは自分の右側にスペースが作られたことを理解しつつ、敢えてこの場所を空けながら走ったのだと思う。ボールが出たタイミングで寄せ、奪い切ろうというねらいだ。

 

スペースを作る動きを理解している選手であれば、この近寄って離れるプル&アウェイの動きは一般的な動きで想定できるからだし、通常であれば寄せられるのに少し空いている。

 

ところがパスを出したムバラクの左足は、マテューの予測を超えていた。

 

空けたスペースにボールを入れるのではなく、内側に一度入り込んで右向きに寄せようと構えて併走したマテューの背中側に左足で、しかもシュート回転のボールを送ったのだ。

 

一旦左に寄ったボールはそこから回転がかけられていることから、マテューの背中を通過すると、右側からインに入ってくるボガの足下にピタリと入る。

 

若干右側に寄りすぎたボガのトラップではあったが、冷静にテア・シュテーゲンの位置を見ると、ファーサイドにシュート。ボールはファーサイドのポスト内側に当たり、ゴールの中に吸い込まれていった。

 

スペースを作る動き、そしてそれを読むディフェンダーの動き。さらにはそれを上回るアイデアによるパス。

 

降格圏19位に沈むグラナダだが、それぞれの選手の見せる技術は世界トップレベル。そんなリーガの底力を見せ付けられた、非常にテクニカルな1点だった。

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