「縦に速く仕掛ける」を大きなキーワードに、ここまで三つの親善試合を勝利。
順風満帆に見えたハリルホジッチ新体制での試合でしたが、アジア2次予選初戦は引き分けとなってしまいました。
これまでの日本代表は、ボールを大切にする意識が強いことから、「相手ゴールへボールを運んでシュートを打つ」ための縦への意識が薄く、そこへの修正が、ハリルホジッチ監督の大きなコンセプトだと私は感じました。
ただ、ここまでの三つの親善試合で気になったのが、縦への意識が強いことから、強引に縦へ入れるパスが多く、そこで失うケースが多い、ということでした。
現代サッカーで大切なのは、自分たちのボールを大切にすることだと私は考えています。もちろん、相手ゴールの近くまでボールを運べば、失うリスクは高くなっていきます。ですが、チャレンジすべき場所と、そうではなく、ボールを失わないことを大切にするエリアがあります。ボールを失うべき場所ではない場所で、相手にボールを渡してしまう場面が、ここまでの三つの親善試合でとても気になったのです。
恐らくそれは、日本代表の成長のプロセスで、「まずは縦に多少強引でも入れていく勇気を持たせたい」と、新監督が考えてのことではないかと、私は想像しています。
ですがそこでも、選手一人一人が「縦への意識を強く持つ」というタスクをこなしながら、それぞれの場面で自らが判断していく勇気も持ってほしいと感じました。
結果的にシンガポール戦は0-0の引き分け。20本以上のシュートを打ちながら、点は取れませんでした。
日本のサッカーが陥りやすいパターンとして、「裏を取る」ことだと私は感じています。
相手を崩し、自分たちの攻撃パターンに持って行くには、相手の裏を取ることが大切。というか、裏を取ることに専念してしまう。
裏を取るためにどうするかというと、相手ディフェンスと併走し、スペースへボールを出すというパターンを繰り返します。
それも一つの攻撃の形ではありますが、あまり効率のよい攻めではないのではないでしょうか。
目的は「相手の守備を崩すこと」なのですから、もっとそこにフォーカスすべきだと私は考えます。
具体的にどうするかというと、相手の前でボールを動かし、そのことによって相手ディフェンスは動きますから、そこから崩していけば良いのです。そうしてボールを動かすことで相手ディフェンスがズレ、間が空いて裏がねらえるならそこへスルーパスを出してフィニッシュへ持ち込めば良いし、ずれたところをドリブルで抜けていっても良い。
そこの工夫がシンガポール戦ではなく、相手の前で崩すことをせずに裏をねらう。しかも相手ディフェンスはゴール前に密集しているから、物理的な「相手の裏」のスペースは狭い。狭いところにボールを入れる(相手ディフェンダーを動かすなどの)工夫もないから、シュートも打ちにくい。
全体的にそんな印象でしたが、皆さんはいかがだったでしょうか?
例えばこの記事では、引いた相手から点とを取る方法として、ユベントスのボールの動かし方について紹介してます。ポイントは、左サイドハーフが受けたボールをセンターバックへ戻し、さらにゴールキーパーに渡す。そしてそこからワンタッチでもう一人のセンターバックを経由してボランチのピルロへ。ピルロは得意のロングパスでフォワードへ。相手ディフェンダーは焦ってフォワードを倒し、PK獲得で1点ゲット。
こんなプレーです。
ここでポイントなのは、GKまでボールを戻し、相手ディフェンダーをまえに釣り出しつつ、縦への意識を持ち、速く前にボールを入れていくその判断。
私の推測通りであれば、ハリルホジッチは「少しでも速く縦に入れる」意識を日本代表に植え付けるため、そのプレーを選手たちに求めているのだと私は思います。
でも、サッカーは相手がいるからこそ難しく、面白い。そこの駆け引きを楽しめれば、試合結果は自ずと付いてくるはずではないでしょうか。
相手を引き出すためにボールを下げる。
相手を前に釣り出すために、バイタルエリアにボールが入ったらシュートをねらっていく。
もっと積極的に、そうした駆け引きをすべきだったのではないでしょうか。
相手が待ち構える狭いスペースを突破するためには、代表の練習時間はあまりにも短いと感じます。バルサが、狭いスペースをパスで崩すのは、高い技術の選手が毎日、一緒に練習を重ねるからこそできるものだと思います。
とは言え、日本代表も時間をかけてお互いの理解を高めていけば、実現できるプレーだと思います。
結局、一人一人の判断力なのではないかと感じました。